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第2 反対株主の株式買取請求手続と株式の評価

4 判例
(7) カネボウ株式買取価格決定申立事件
東京地裁 平20.3.14決定(事件番号:平成18(ヒ)256号、同263号、同264号、同268号、同278号、同279号、同297号、同300号)
(イ) 事案の概要
対象会社甲社の主要事業(食品事業、ホームプロダクツ事業及び薬品事業の3事業)の営業譲渡に反対した株主らが、株式買取価格の決定を申請した事案
(ロ) 対象企業の特性
(業種) 各種繊維工業品、医薬品、化粧品及び各種食品等の製造、加工及び販売等
(規模) 資本金350億9998万5000円
(その他) 東証1部上場企業であったが、経営状態が悪化し、平成16年5月、産業再生機構の支援決定を受けた。
平成17年4月、過年度の粉飾決算とそれに伴う決算修正を公表し、これを受けて、東証及び大証は、同年6月、上場廃止措置をとり(最終株価は1株360円)、それ以降、非上場会社となった。
平成17年12月、産業再生機構は保有する甲社株式全部をスポンサー企業に1株210円で譲渡した。
スポンサー企業は、平成18年2月、甲社について買付価格を1株162円とする公開買付を行い、同年3月までに、普通株式2181万4229株を取得した。
尚、甲社株式には譲渡制限は付されていない。
(ハ) 株主構成
発行済株式総数2億2641万5057株(そのうち議決権のある株式は1億6641万5057株)
反対株主(申立人)は、いずれも甲社の普通株式を有する一般投資家であり、最も少ない者で100株、最も多い者で145万3100株(全体の0.8%)であり、合計約677万株(全体の約4%)。
他方、スポンサー企業の有する議決権のある株式数は1億3694万6729株(全体の約81%)。
(ニ) 採用された算定方式
DCF方式
(1株360円)
(ホ) 算定方式採用理由・要旨
  • 営業譲渡が行われずに会社がそのまま存続すると仮定した場合における株式の価値の算定にあたっては、一切の事情を斟酌して、反対株主の投下資本回収を保障するという観点から、継続企業としての合理的な価格を算定することになる。
  • スポンサー企業は既に甲社の支配権を確保しているから、反対株主(申立人)らがその所有する株式を手放したとしても、甲社の支配権に対して与える影響はほとんど考えられないから、支配権の移動という観点から株式価格を評価する必要はない。
  • 本件において、継続企業としての価値の評価にふさわしい評価方法は、収益方式の代表的方法であるDCF法である。
  • 配当還元方式は、継続企業の価値を評価する方法の1つであるが、甲社は、事業再生途上の企業であったため、配当を行うことができる状況にはなく、また、一般に妥当とされる配当額を求めることが困難である上、成長性や成長率が必ずしも明確とは言いがたいことから、本件においては当該方式を考慮することは相当でない。
  • 平成18年2月の公開買付は、取引量の点において適切な取引事例とはいえないから、公開買付価格を参考にすることは相当でない。
  • 純資産方式は、事業継続を前提とする会社においてその企業価値を評価する方法ではないから、本件ではこの方式を考慮するのは相当でない。
  • 甲社は、最近まで産業再生機構の支援を受けていた事業再生途上の会社であって、このような状況にない上場会社とは経営状況が大きく異なるから、類似会社比準方式を考慮するのは相当でない。