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第2 反対株主の株式買取請求手続と株式の評価

4 判例
(6) レックス・ホールディングス株式取得価格決定申立事件
東京地裁 平19.12.19決定(事件番号:平成19(ヒ)122号、同109号)
(イ) 事案の概要
対象会社甲社の株主総会で全部取得条項付株式の取得決議に反対した株主ら(申立人)が、会社法172条1項に基づいて、株式取得価格の決定を申し立てた事案
(ロ) 対象企業の特性
(業種) フランチャイズシステムによる飲食店、コンビニエンスストア及びスーパーマーケットの経営等を営む会社の株式を所有することにより当該会社の事業活動を支配・管理することなどを目的とするホールディングカンパニー
(規模) 資本金96億6975万6658円
平成12年以降平成19年4月29日の上場廃止に至るまでジャスダックに上場
(その他) 平成18年8月21日に特別損失の発生による同年12月期業績予想の下方修正等の発表を行い、それ以後、3度にわたり業績予想の下方修正を行った。
甲社の株価は、平成18年8月21日の終値31万4000円、21日の終値30万4000円であったが、上記業績予想の下方修正等の発表以降、甲社の株価は大幅に下落し、22日の終値25万4000円、9月26日の終値14万4000円となったが、その後、株価は上昇を開始し、11月10日の終値21万9000円となり、後記公開買付公表日以後、概ね22万円前後で推移している。
乙社は、平成18年11月10日、甲社の普通株式1株につき23万円を買付価格とする公開買付を実施することを公表し、他方、甲社は、同日、これに賛同の意を表明するとともに、当該公開買付がMBOの一環として行われるものであり、上記買付価格は、過去1か月間のジャスダックにおける市場価格の終値の単純平均値20万2000円に13.9%のプレミアム(2万8000円)を加えた価格であることを説明するとともに、公開買付成立後、発行済みの全ての普通株式に全部取得条項を付して、全株式を取得する予定であること等を公表した。
尚、甲社株式には譲渡制限は付されていない。
(ハ) 株主構成
発行済株式総数26万4360株
反対株主(申立人)はいずれも一般投資家で、合計846株(全体の0.3%)を有する。
乙社は上記公開買付により甲社の発行済株式の91.78%を所有するに至った。
(ニ) 採用された算定方式
取得日における株式の客観的な時価(取得日にできる限り近接した市場株価を基本として、1株20万2000円)に加えて、当該株式の強制的取得により失われる今後の株価上昇に対する期待権を評価した価額(上記買付価格におけるプレミアムを基準として、1株2万8000円)をも考慮する。
(1株23万円)
(ホ) 算定方式採用理由・要旨
  • 譲渡制限を付されていない株式を所有する株主は、当該株式を即時売却するか継続保有するかの選択肢を有し、即時売却により実現される株式の客観的な時価を把握しているほか、継続保有により実現する可能性のある株価上昇に対する期待権を有しているため、全部取得条項に基づき会社による株式の強制的取得が行われると、これによって株主は株価上昇に対する期待権をも喪失する結果となるから、取得価格を決定するにあたっては、取得日における株式の客観的な時価に加えて、強制的取得により失われる今後の株価上昇に対する期待権を評価した価額をも考慮することが相当。
  • 株式の評価基準時点において甲社は非上場会社となっており、市場株価は存在しないが、評価基準時点と上場廃止日がわずか12日しか離れていない本件においては、当該市場株価がその企業の客観的価値を反映していないと認められる特別の事情のない限り、評価基準時点にできる限り近接した市場株価を基本として株式の客観的な時価を評価することが相当。
  • 強制的取得により失われる期待権を評価した価額については、その評価方法が現段階では確立しておらず、また、本件においては何らの鑑定も実施されていないため、専門的知見を反映した具体的金額を算定することはできないことから、その余の事情を検討すると、上記買付価格は、諸般の事情に照らし、市場において一定の合理性を有するとの評価を受けたといえることから、当該買付価格において示されたプレミアムを基準にするのが合理的。