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第2 反対株主の株式買取請求手続と株式の評価

4 判例
(3) 大阪高裁 昭60.6.18決定(事件番号:昭58(ラ)195号)
(イ) 事案の概要
対象会社甲社の株式譲渡制限に関する定款変更決議に反対した株主からなされた旧商法349条による株式買取請求に基づく買取価格決定申請事件において、株主側が抗告した事案(1株2000円が相当と主張)
(ロ) 対象企業の特性
(業種) 紡績業
(規模) 大正10年設立
資本金1億円
従業員約300名
(その他) 非上場、非公開の閉鎖的同族会社。
昭和55年11月ころの時点における、帳簿上の総資産は36億8957万円、その推定清算処分価額は約81億1390万円。
近年売上高が毎年減少し、経常利益は大幅な赤字であり、土地等の売却により経営を維持している状況であって、今後も業績好転の見込みは少ない。
子会社の業績もよくない。
(ハ) 株主構成
発行済株式総数200万株
対象株式数は合計16万1510株(全体の8%)。
反対株主(抗告人)3名は甲社の普通株式をそれぞれ、6万0440株(全体の3%)、8万1400株(全体の4%)、1万9670株(0.9%)有するが、甲社の取締役であった反対株主の一人が甲社の代表取締役と甲社の経営方針に関して意見が対立し、当該反対株主は昭和55年8月に取締役を辞任している。
(ニ) 採用された算定方式
収益還元方式(1株0円):配当還元方式(1株0円):純資産価額方式(清算処分価額による。1株1264円)=3:3:4
(1株505円)
(ホ) 算定方式採用理由・要旨
  • 営業を継続している会社の場合でも、株主は潜在的には残余財産分配請求権を有しており、純資産価値の大きいことが事業の経営に利益に働くのは当然のことであるから、純資産価額方式を考慮するべきであり、本件事実関係の下では、他の方式と併用する場合の純資産価額方式のウエイトは軽視されるべきではない。
  • 類似業種比準方式は、元来課税目的の株式評価であり、評価の簡便性・画一性が要求され、旧商法349条1項の「公正ナル価格」とは異なった評価となることは避けられない上、類似業種の標本会社が甲社のような同族会社で事業の内容も単純な場合と類似性があるか極めて疑問であるばかりでなく、公表されている算式のうち減価要素として0.7を乗ずる数値の根拠が不明であるから、本件において当該方式を採用するのは相当でない。
  • 売買実例価格方式については、本件記録上認められる売買例の買受人はそのほとんどが甲社の代表取締役であることからすれば、当該売買例は政策的な考慮か市場性のないことからする便宜的な方策として代金額が定められたもので、客観的価値を適正に反映しているものではないから、当該方式を採用するのは相当でない。
  • 株式価格が本来擬制資本の価格であることからして、試算価格がゼロとなる場合であっても、収益還元方式と配当還元方式は無視されるべきではない。
  • 本件においては、収益還元方式、配当還元方式、純資産価額方式(清算処分価額による)の三方式を併用することとし、本来、均等割合とするのが公平であるが、業績好転の見込みが少ないことを考慮して、純資産価額方式に他より若干のウエイトを置くこととする。