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第2 反対株主の株式買取請求手続と株式の評価

4 判例
(1) 大阪地裁堺支部 昭43.9.26決定(事件番号:昭和41(ヒ)6号)
(イ) 事案の概要
対象会社甲社の株式譲渡制限に関する定款変更決議に反対した株主が、旧商法349条による株式買取請求に基づき買取価格の決定を申請した事案(1株1万6280円と主張)
(ロ) 対象企業の特性
(業種) 菓子食糧品の製造加工販売業
(規模) 資本金1億8200万円
(その他) 簿価純資産額6億2954万2777円。
甲社の業績は昭和39年度以前は好調で、高率の利益配当がなされたが、昭和40年度で1688万5470円、同41年度で8388万0886円の欠損となり無配が続いている。
(ハ) 株主構成
発行済株式総数3万6400株
創業者一族が甲社株式の大半を保有し、わずかにその余の一部を特定の従業員が功労株として保有するにすぎない同族会社。
反対株主(申請人)は5名で、いずれも同族株主であり、甲社株式をそれぞれ2000株、2217株、50株、122株、50株、合計4439株(全体の約12%)有している。
(ニ) 採用された算定方式
国税庁長官通達直資56直審(資)17昭和39年4月25日付相続税財産評価に関する基本通達に基づく株価の算定方式
(1株8940円)
(ホ) 算定方式採用理由・要旨
  • 新たに譲渡制限のなされた株式の価格決定については、旧商法349条及び同法204条の4両規定の趣旨に照らし、買取請求時点における会社の資産状態その他一切の事情を斟酌し、かつ譲渡制限の決議がなかったとすれば、有していたであろう公正な価格をもって、これを決定すべき。
  • 株式買取請求の場合は、それが投下資本回収の方法であり、会社と株主との個別的な清算という性質上、主として、株主としての経済的利益の補償という観点から、その算定基準を考慮すべき。
  • 株主としての経済的利益とは、主として、議決権、利益配当請求権、利息配当請求権、残余財産分配請求権、株式自由処分権等をいうのであり、これら諸権利のうち、議決権は会社の支配経営面における利益であり、利益配当請求権、利息配当請求権、残余財産分配請求権は投資面における利益であり、株式自由処分権は投機面における利益であるから、株式価格は、観念上一応支配面、投資面、投機面での価格により形成されるといえ、それは会社の現有純資産、営業成績(特に収益力、配当率)および流通価格(市場価格ないし取引先例価格)に由来するから、これらを株価算定の基準とすべき。
  • 株価の算定といっても、常に一律一定の同一算定方式によるのは必ずしも妥当でなく、会社の規模、個人会社性や同族性の有無、上場非上場の別等の如何に応じて、これに適応した算定方式を採用するのが合理的であるから、「基本通達に基づく算定方式」を採用するのが相当であり、これは上記算定基準にも即応する。
  • 「基本通達に基づく算定方式」は、甲社のように、流通市場を持たない閉鎖的な株式とはいえ、上場し得るに足りる実体を持つ会社の株価の算定について、よく妥当するのみならず、当該方式は株式の譲渡を自由になしうる類似上場会社に比準するものであるから、本来、買取価格は譲渡制限決議がなかったものと仮定して自由に譲渡しうることを前提として算定される価格であるべきとの反対株式買取請求権の趣旨に合致する。