携帯電話の方はこちらからお入り下さい。

第1 非上場株式の譲渡手続と株式の評価

4 判例
(17) 千葉地裁 平3.9.26決定( 事件番号:平2(ヒ)3号 )
(イ) 事案の概要
対象会社甲社の元専務取締役が持株を譲渡した事案。
(ロ) 対象企業の特性
(業種)  空港関係の貨物運送業
(規模)  昭和48年設立
資本金額不明
従業員数約300名
発行済株式総数10万4000株
(その他)  昭和61~63年の年間売上高はそれぞれ17.4億、21.75億、30.5億円で、税込み利益はそれぞれ4,300万、6,000万、8,100万円。
配当率はいずれも15%
設備を拡張して増収を続けており、営業基盤も固い。
(ハ) 株主構成
売主は全体の10%の持分比率を有する原始株主。会社設立以来14年にわたり常務取締役又は専務取締役。
その余の株主構成、買主の属性等は不明。
(ニ) 採用された算定方式
イ.配当還元方式:ロ.純資産方式=1:1
尚、イ.は売主が支払を受けた役員報酬をも配当金の変形として考慮。
ロ.は法人税相当額を控除せず、土地の価格のみ簿価と時価の乖離が著しいとして鑑定価額に拠った。
イ.4,196円、ロ.5,937円となり結論として5,066円
(ホ) 算定方式採用理由・要旨
  • 発行済株式総数の10%では会社経営を支配するに足りるものではないが、譲受人において会社の役員として経営に参加できる可能性もあり、配当のみを期待する一般投資家とはやや異なる面がある。
  • 対象会社甲社の株式については額面金額での売買実例があるが、適切な取引先例であるかは疑わしい。
  • 純資産方式は株式の客観的価値を算定する方法として一定の合理性をもち、買取価額の決定は会社の資産状態その他一切の事情を斟酌して決定すべき(商法204条ノ4第4項、注:会社法144条3項に相当)ものとされることからも、買取価格の決定に当たり第一に考慮されるべき方式であると言える。
  • 時価純資産方式による場合にも、事業継続を前提とする評価であるから、会社の解散を想定して全資産を換価した額から清算所得に対する法人税を控除した額に基づく残余財産分配額によるのは相当ではなく、全資産の評価時点における市場価額によるのが相当である。
  • 売主が本件株式を純資産価額で売却できた可能性を認めるに足りる資料もなく、更に本件会社が近い将来解散して解散価値を現実化する可能性は乏しい。