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第1 非上場株式の譲渡手続と株式の評価

4 判例
(15) 東京高裁 平1.5.23決定( 事件番号:昭63(ラ)726号、728号)
(イ) 事案の概要
対象会社甲社の原始株主であり、専務取締役であった者が株式の譲渡承認を求めた事例。なお、対象企業が指定した買主3名はいずれも対象企業の下請企業の代表取締役であり、対象企業に依存して経営を維持している。本件売買にかかる供託金約1.6億円も全額対象企業から借り受けたもの。
(ロ) 対象企業の特性
(業種)  紳士用装身具卸売業
(規模)  昭和47年設立
資本金1億500万円
発行済株式総数21万株
(その他)  昭和57年から61年まで毎期約63億円から74億円の売上を有し、約5,000万円から2億9,000万円の税引後当期利益を得た。純資産額も年々上昇し、直近年度で17.9億。売上高の半分以上を占める紳士用装身具の卸売業界では売上高第1位で安定した経営状態。昭和47年から51年までは年3割、同58年までは年2割、同61年までは年1割5分の配当実施。
(ハ) 株主構成
対象会社甲社の代表取締役A及びその一族が80%以上を所有。
売主は1万9000株(9%)所有。
買主らはかつて各1250株を保有していたが、昭和59年にAが代表取締役を務める株式会社乙社に1株1,000円で全て売却している。
(ニ) 採用された算定方式
イ.配当還元方式:ロ.(簿価)純資産方式:ハ.収益還元方式=6:2:2
尚、イ.924円、ロ.8,284円、ハ.2,818円であり、結論として株価は2,775円。
(ホ) 算定方式採用理由・要旨
  • 対象企業の経営は順調で、近い将来における解散は予想されないこと、買主らが取得する株式が9%に過ぎないことから買主が対象企業の経営を支配できないことが明らか。本件株式の取得者は配当金の取得を主たる利益ないし目的とせざるを得ないから、基本的には配当還元方式が相当。
  • しかしながら、将来の配当額の予測は困難であり、しかも対象企業は収益の相当割合を内部に留保している。支配株主が全く恣意的に配当額を定めることは、会社経営の継続を前提とする以上許されず、会社の資産、収益の内容、程度を勘案せざるを得ない。
  • 株式の譲渡制限の定めは会社の利益のため、その限度で株主の自由に制限を加えるものであるから、自由に譲渡した場合に比して不利益を与えることを避けなければならない。
  • 株式を自由譲渡するにあたっては、譲受人の意思がその価格の決定に大きく影響するところ、本件株式数は少数株主権の行使が可能であるし、対象企業が売主の譲渡予定者を忌避したことは右譲渡予定者が単に配当利益のみに関心を抱くものでないこと、また、買主とAの関係からは、Aが将来本件株式を取得する可能性が少なくないことが推認される。