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第1 非上場株式の譲渡手続と株式の評価

4 判例
(13) 東京高裁 昭63.12.12決定( 事件番号:昭63(ラ)370号 )
(イ) 事案の概要
同族会社甲社における買取請求の事案。売主は父、買受人は長男。
売主は純資産価額方式のみによって価格を算定すべきと主張して抗告(抗告棄却)
(ロ) 対象企業の特性
(業種)  不動産賃貸及び管理業
(規模)  昭和44年設立
資本金500万円
発行済株式総数1万株
資産は建物とその敷地の借地権(価格の合計29億1,970万2,000円)がほとんどで、その営業は右建物を第三者に賃貸するのみ。
(その他)  買主の妻が代表取締役、買主及び買主の長男が取締役、買主の二男が監査役で従業員はいない。
直近2年間の年間平均利益額は92万6,000円。利益配当なし。
(ハ) 株主構成
売主(買主の父)30%
買主(売主の長男。対象企業の取締役)60%
買主の妻(対象企業の代表取締役)10%
(ニ) 採用された算定方式
イ.純資産方式:ロ.収益還元方式=7:3
尚イ.は法人税相当額を控除
ロ.は収益還元方式において利益率として10%を採用
イ.12万2,812円、ロ.926円であり、これを上記の割合で斟酌すると8万6,246円となるが、最後にこの価格から市場性の欠如を理由に30%減価し、結論として6万372円。
(ホ) 算定方式採用理由・要旨
  • 対象会社甲社は、営業利益を確保して株主に配当することよりはむしろ資産の保有を目的とする色彩が濃いものであるが、ともかくも19年間営業を続けており、今後直ちに解散して清算するものではないから清算を擬制した純資産の価額方式のみでなく、会社の存続を前提とした算定方式も斟酌すべき。
  • 本件売買価格は、会社が指定した買主が誰であるかといった主観的事情により左右されるべきものではない。
  • 売主が申請外Aとの間で1株15万円での売買を合意していたとしても、その合意価格が客観的、合理的なものと認め得る資料は何もない。
  • 本件の場合、類似会社が存在せず、しかも無配であるから、類似業種比準方式、配当還元方式はいずれも採用し難い。
  • 純資産方式と収益還元方式のうち、本件会社の実態からは会社資産に対する持分の評価として純資産方式を重視するのが相当。
  • 算定された価格から、市場性がなく、譲渡制限があることに鑑み、3割を控除すべきである。