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第1 非上場株式の譲渡手続と株式の評価

4 判例
(3) 東京高裁 昭51.12.24決定( 事件番号:昭51(ラ)831号 )
(イ) 事案の概要
対象会社甲社の株式の売買価格につき、指定買受人から抗告がなされた事実(1株647円が相当と主張)
(ロ) 対象企業の特性
(業種) 輸送用機器のオイルフィルター及びエアクリーナー製造業
(規模) 資本金1,500万円
従業員53名
(業績) 昭和49年3月末までの業績は悪く、繰越欠損金が多額、無配状態だが、最近の業績は著しく改善している。
(ハ)
相手方(譲渡人) Y1 5000株(全体の16.66%)
Y2 4000株(全体の13.33%)
抗告人(指定買受人) X 2万1000株(全体の70%)
設立当時の株主はY1 Y2のみ。その後X会社が資本参加。
甲社は、X会社の全面的協力工場。
(ニ) 採用された算定方式
再調達時価純資産方式:収益還元方式=1:1
(1株1,410円)
(ホ) 算定方式採用理由・要旨
  • 甲社は、全く配当が実施されていない会社で、配当の予想は困難であり、本件株式の売買当事者が一般投資家でないことからいって配当還元方式を採ることは相当でない。
  • 甲社の業態では適切な類似会社を選定することが困難であることから類似会社比準方式を採用することもできない。
  • 本件は事業継続を前提とする株式の評価をするものであるので、特段の事情のない限り単純に時価純資産方式によることは相当でなく最近の業績が著しく改善しているので、簿価純資産方式も相当でない。
  • 本件株式の評価は、売買当事者が経営支配を目的としており、配当額よりも企業利益そのものに関心をもっているといえるので、収益還元方式は本件株式の評価に適する。しかし、抗告人は甲社の全株式を取得することになり一切の企業利益は勿論、会社財産も抗告人に帰属するので収益還元方式だけによるのは妥当性を欠き、会社財産の実質的取得の側面から時価純資産価額方式にも相当のウェイトを置き、複合して適用するのが適切である。
  • 時価純資産方式の採用にあたっては、解散を前提とする処分可能価格によるのではなく、最有効利用を前提とした再調達価格によるのが相当といえる。